草津町には、かつて「湯もみ細工」或いは「温泉ちぢみ」と呼ばれる伝統手芸品がありました。ウール 100 % で織ったメリンスという生地を、70 度くらいの温泉に浸しながら揉み続けて変質させ、それで小物入れなどをつくるのです。しかし、この「温泉ちぢみ」が廃れてしまったのは、上質のメリンスが手に入らなくなったからだけということではありませんでした。復元への道はかなり難しそうです…
草津温泉資料館に行って、現物を拝見しました。これが伝説の温泉ちぢみです。事情を話し、触れさせていただきましたが、フエルトの様な生地です。ただし、フエルトの方が柔らかいので、好みもあると思いました。そもそも、ウールはお湯でも縮みますから、温泉で縮むのは当たり前です。ただし、70 ℃の湯で長時間揉んだとなると、火傷しなかったのかが疑問です。何かおかしい様な気がします。また、コストもかかるし大変だしお金にならないだと、だれも継承する人がいなくなるのは当たり前のことです。
報われない、ひどい目にあうためにものづくりするなんておかしな話です。…ですから、昔の伝統技術や文化を正確に記録して残しておくことは重要なことですが、昔のままの〔温泉ちぢみ〕をそのまま復活させることはナンセンスであり、非現実的だと思います。現代の人達がもっと気楽に “ 布あそび ” というか、自然の産物 “ 温泉 ” と、人間の作った“ウール生地”をコラボレーションして楽しむ…といった〔新・温泉ちぢみ〕を開発しなくてはなりません。